妄想代理人

クリスマスが迫る頃のこと。

FMラジオを78.6だったか、その辺りに合わせると三代目ブラザーズのラジオが流れていた。

「ええっと、○○さん(メンバーの名前)、サンタクロースっていつまで信じてましたぁ?」「僕は割と早くから親だとわかっていましたねえ」という話題をラジオにて進めていた。ラジオをつけて数秒で軽蔑するだなんて思ってもいなかったので、もはや笑ってしまったことを覚えている。

影響力のある大人が公共の電波に乗せて、世間の家庭におけるサンタクロースの真実について語るだなんて、どうかしていると思った。仮に僕が子供だったら、もしくは僕に子どもが居たら、ラジオを壊しかねない。壊れかけのRadioで妥協なんてしない、壊れたてのRadioを創造す。見たくも聞きたくもないことがいくらでもある、せめて逃げ場を求めたラジオでは、そんなことを言わないでくれって幽霊達も言っている。

また別のラジオでは、「世間は仕事納めだと言っていますが、私は年末まで仕事があります。このラジオを励みに頑張ります」というメッセージに対して、「ううん、頑張って早く納められるようにしましょうねぇ」とラジオDJが返していて、今度は笑いすら出なかった。

僕はすぐさまさよならポエジーのCDに切り替えて平常心を取り戻した。包帯クラブ柳楽優弥を見習ってほしいと思っていた。陽が昇ることすら疑いたくなるほどの暗闇、朝なのか夜なのかわからないバイパスは意外と車が居る。

クリスマス当日のことだったか、また別のラジオでは「僕は受験生です。僕にはクリスマスも何もありません。勉強がんばります!」というシンプルなメッセージに僕は泣いた。君のおかげで僕は1日を乗り越えられた、ありがとうございます。

突然の雪に街が一つになった。突然の夕立でも一つになった。あの子の帰省に田舎が一つになった。新しい命の誕生に親類が一つになった。

あのラジオで知らない皆がきっと一つになった。あいつの呼び掛けで仲間が一つになった。一つになれなかった僕らが小さな夜に仲間になっていた。