ちょっとご飯大盛りにしてあげるとかね

電車は遅れるし、交通は渋滞する。遅延証明書、紙切れ1枚の証明。紙切れって揶揄されるお前も大変だな紙切れ君。髪切れ俺、噛み切れえぐみを。

電車は遅れるし、交通は渋滞する、日々が真っ当に遂行されることは当たり前なんかじゃないのだ、きっと。元気でいられることも当たり前なんかじゃないよ、体調は崩れるから。大丈夫。毎日生きている、冷たい水で朝をこじ開ける、今も誰かが働いている、何かを企んでいる。眠っている。

 

昨夜のこと。

極端を許せば、誰かを誘うということは、誰かの時間を殺すことだ。暴力なのだ。昨夜大勢に"暴力"を振るった。こんな夜を本当に申し訳ない。ありがとうございました。

記しておかなければならないことが昨夜にはいっぱいあるのだけど、記憶を昨夜に忘れてきてしまった。昨夜に取りに戻ろうと思ったけれど方法がなかった。昼には僕らの残り香も無くなっていた、誰かが働いてくれたおかげだ。清掃員は寒そうだ。

 

夜はとっくに明けていた。

天気は良好、体調は快調へ上昇、明日は働こう。ネットカフェのフラットなスペースで眠って起きた。正午を過ぎていた。

昼前に起きるのと、昼後に起きるのとでは大きな違いがあることに改めて気づく。軒並みランチタイムが終了していく。乗り遅れてしまった。遅延証明書をお店に提出してランチにありつきたかったけれど、遅延証明書なんてない。「いつまで寝てんだよ」って空に笑われた。降りたシャッターと準備中と書かれた看板にも笑われた。高瀬川は綺麗だった。

 

以前住んでいた近くへ、レンタサイクルにて。自転車を走らせていると、ふと銭湯を見つけた。一度通り過ぎたものの気になったので、ブレーキをかけ、旋回して、銭湯の前まで戻る。その時だった。

「ふらふらするなや」と自転車を漕ぐおじさんに言われた。おじさんのことは視界に入っていたし、十分な距離を保って自転車を操ったつもりだったけれど気に障ったみたい。僕も気に障ったので追いかけてみた。追い付いて「あの、すみませんでした」と告げた。それが思い付く限り最大の僕の仕打ちだった。ふらふらすることも許されないなんて、ね。でも相手も相手で嫌な気持ちになっていたのは事実だから、ね。

 

気を取り直して、喫茶店を2つ。「黒ん坊」と「花の木」という。「黒ん坊」のマスターがたくさん話をしてくれた。この辺りには、下宿屋がたくさんあったこと、学生が宝物だったこと、かつての若者の再訪には涙が出ること、など。

 

「ちょっとご飯大盛りにしてあげるとかね」

 

今はもう珈琲だけらしいけれど、ちょっとご飯大盛りにしてもらって、おおきにごちそうさまでーすって、言いたかった。

救われた若者達が大勢いたのだろう。

たくさん当時の話を聞いていると、洋式の便座より和式の便座で用を足したくなった。寒くて狭くない個室、タイル張りの壁面。様々な感情が寺町鞍馬口で交錯して涙が目を覆った。流れる手前で乾いた。うずくまってしまった。

 

京都に居た頃、時々お世話になっていた銭湯に行った、「花の湯」。16:30。早い時間に行くのは初めてだった。ガラガラと戸を開けると視界に広がるおじさんの裸体。なんか楽しいんだわな。

 

バンドをしていた頃、

「泣いてたってさ叱らないで、笑えてるなら褒めて欲しい、消えた時間が残したんだろう、なくしきれない世界があった」

「忘れたって良いことも、無くしたっていいものも、僕らが出会えたことを、ちゃんと教えてくれてる」

という歌を歌っていた。今日は自分達の歌が染みた。

 

高校生の頃、

洋食屋へ1人で行ったことを思い出してみた。ハンバーグカレーを注文した。ハンバーグカレーがテーブル届いた。「いただきます」と控えめに口にして、湯気を進んでハンバーグにスプーンを挿した。ハンバーグにチーズが入っていた。

「チーズインなんや、チーズトッピング+100円とかじゃないんや、デフォルトでチーズインなんや、嬉しい」って喜んだ。その店、今はもう無くなっていた。

 

カップをソーサーから取り、ソーサーへ戻す為に使った左手が、今日は妙に震えたのでした。