的外れ

二人で傘を差して歩いた記憶しかないのであれば、雨の日にいつもあなたのことを思い出す

 

終点へ往く終電で出会った他人のことを、終点へ往く終電に乗車する度に思い出す

 

二度と会えないのは、事実上の死である。

 

好きだった頃のあの人に会いたくても、会えない。それもまた死である。死は生に先行している。

僕が好きだったのは、あなたのほんの一部であった。しかし、その、ほんの一部を、あなたの本当だと思い込んでいたのだ。

共通の話題が無いから、僕に合わせて話してくれたのだと気付かず、気の合う人だと思う愚かさと来たら。

あなたの本当を、僕は無意識に殺していた。僕の頭の中のあなたは、既にあなたではなくなっていたのである

それでも僕らは人付き合いを続けていく。この指に誰も止まっていないのでは、と夏の夜が鈍く過ぎて行く