ならず者

忘れていたことを覚えていてくれる人がいる。

京都に居た頃、米を鍋に入れ水を入れ、出汁の素を少し入れてグツグツとさせてふりかけをかけてよく食べていた。腹が膨れる気がするし、美味しかったんだ。誰かに食べさせるものではないけど、そのおかゆのならず者で、もてなしたことがあった。地べたで寝てるのが似合う男だった。その彼が今、僕の前の部屋に住んでいる。

久しぶりに訪れてみた。ノックをしても反応がなかったので部屋を覗いたけど居なかった。壁には平成三十年と黒いマジックで書かれてあった。彼が住んでくれて良かった気がした。

 

 

友達の誕生日だった。彼は日本語の大体を「うっす」で代用することができる風変わりな日本語母語話者だ。「どっかから女、生えて来ねえかな」という夜の愚かな呟きを大量のシケモクと共にベランダに残す、そんな人だ。

お祝いに数人で駆け付けた。部屋に入るとwifiが入って、少し泣けた。このwifiによく世話になっていた。パソコンも何度も借りた。バイトが終わるとよく駆け込んだ。迷惑な時間ばかりだった。愚かな煙草を何本も吸った。馬鹿話に馬鹿みたいに綺麗じゃない花を咲かせた。
あったはずの場所には冷蔵庫がなく、酒瓶も軒並み消え、刻々終りが近づいている。ある日を迎えると全部が終わる。あの部屋で過ごすならず者の夜はもうなくなるんだ。寂しいものだ。

 

その彼と会って間もない頃、A (読み方は「あ」)という飲食店に行った。「何か次、飲む?」と尋ねても「氷があるので大丈夫です」と断られたことがあった。とても好きな思い出だ。

透明のジョッキをガラガラと傾け、氷を含み舌の上で融点へ運び、喉を潤しては、ガラガラと戻して。あれから4年が経とうとしている。