敗北したポーカー

今ここに言葉を綴っている時間と労力より、生産的な事をしている大人達が大勢いる。そう思わされる慣れない場所に居た。

 

接待という場に参加させていただく、銀座で食事。目的がある人だらけで、はみ出している人が居ない印象。確かに不届き者が立ち寄る場所では無い、そりゃそうだ。頭を下げられる度に苦しくなる。立場関係って、驚く。

 

ホテルが横浜だったので横浜へ。横浜では。

敗北したポーカー、踊る愉快な大人達、都会の女になった人、タイガースが好きな横浜人、街の経過を観るバーテンダー馬車道。そんな夜だった。最初で最後の"出張"になるのかもしれない、そんな夜が情けなく過ぎた。ポーカーに勝っていれば何かが変わっていたのかもしれないが何回やってもこうなる気がする。

 

幕張メッセ。展示会。忙しそうな人々。僕は二日酔っている。仕事の電話などないし、名刺なんて持っていないし、決定権も無いし、何より辞めるし。辞める。圧死させた弊社への不義理の死臭と昨夜のアルコールが心身に充満して、どうにもうまく生き残れなかった。

 

辞める予定の人がこの場所にも数人かはいるのだろうか。取引先である食品会社に品が良く可愛らしい女の人が居て、うまく生きているんだろうと僕の目からは見えた。上司が名刺交換しているのを見ていた。苦虫を右の奥歯で噛み潰して、秋刀魚の目玉くらいの大きさまで舐め取った飴を左の奥歯で噛み潰しながら見ていた。

 

溜息が染み付いた暗いコートをなびかせて、追われる大人達に肩を轢かれながら喫煙所へ向かった。バツの悪そうな大人達が砂鉄のように群がる。さっきの女の人がピアニッシモを咥えて離して煙を吐いていた、霞んだ顔で。